【電験三種】電気主任技術者が足りない!選任義務と転職・採用戦略

「電気主任技術者を探しているが、何か月募集しても応募が来ない」
「電気工事士の資格は持っている。次にどの資格を取れば市場価値が上がるのか」

このようなお悩みをお持ちの経営者様や、キャリアを考えている技術者の方は非常に多くいらっしゃいます。電気主任技術者は、法律で選任が義務づけられているにもかかわらず、有資格者が慢性的に不足しているという、きわめて特殊な立ち位置にある資格です。

しかも近年は、データセンターや半導体工場の建設、再生可能エネルギー設備の増加によって、必要とされる場面がさらに広がっています。本記事では、制度の内容を一次情報で確認したうえで、なぜこの資格の価値が高いのか、そして採用と転職にどう活かすかを解説します。

目次

電気主任技術者とは何をする資格か

まずは資格の位置づけを整理します。ポイントは「持っていると有利」ではなく「いなければ設備を動かせない」という点にあります。

国土交通省の資料によれば、建設業就業者に占める55歳以上の割合は36.7%で全産業の32.4%を上回っています。電気の保安分野も例外ではなく、経験豊富な世代の引退が目前に迫っているという点が、需給の逼迫にさらに拍車をかけています。

電気事業法に基づく選任義務

一般財団法人電気技術者試験センターによれば、電気主任技術者は電気事業法における自主保安体制の中核を担うキーパーソンとして位置づけられており、事業場ごとの選任が義務づけられています。

つまり、高圧で受電する工場やビル、発電所などは、電気主任技術者を選任しなければ適法に運用できません。人がいなければ設備が使えないという構造が、この資格の需要を支えています。

なお、一定の条件を満たす場合には、外部の法人に保安管理業務を委託する制度も設けられています。自社で選任するか外部に委託するかは経営判断になりますが、いずれにせよ有資格者が関与しなければ成立しないという点は変わりません。

第一種・第二種・第三種の範囲

資格は3種類に分かれており、保安の監督ができる範囲が電圧で区切られています。

Check 保安の監督ができる範囲
  • 第一種:すべての事業用電気工作物
  • 第二種:電圧が17万ボルト未満の事業用電気工作物
  • 第三種:電圧が5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)

第三種、いわゆる電験三種でカバーできるのは、工場やビル、商業施設、太陽光発電所など私たちの身の回りにある多くの高圧設備です。実務での出番が最も多い区分だといえます。

第二種・第一種になると、より高い電圧を扱う特別高圧の設備が対象に加わります。まずは第三種を取得し、実務経験を積みながら上位を目指すというのが、多くの技術者が歩んでいるキャリアの道筋です。

なぜ需要がここまで高まっているのか

需要が伸びている背景には、複数の要因が重なっています。データセンターや半導体関連の工場が新設され、大規模な受電設備が次々に生まれていること。太陽光や風力といった再生可能エネルギー設備が各地に増えていること。そして、既存設備を守ってきた世代の引退が進んでいることです。

設備は増える一方で、有資格者は増えにくい。この需給ギャップが、電験三種の市場価値を押し上げています

採用市場では、有資格者の求人倍率が高い状態が続いています。企業様が「募集しても来ない」と感じているのは、自社の条件の問題ではなく、市場全体の構造であることが少なくありません。だからこそ、外部からの採用だけに頼らない戦略が必要になります。

電験三種の試験制度を正しく知る

難関資格として知られていますが、制度は受験者にとって挑戦しやすい方向へ変わってきています。

4科目と科目別合格制

電気技術者試験センターによれば、一次試験は理論・電力・機械・法規の4科目で構成されています。そして一次試験は科目別合格制であり、有効期限の3年間を使って勉強する方法が認められています。

つまり、一度にすべてを合格する必要はありません。1年目に2科目、2年目に残り2科目という進め方でも資格を取得できます。働きながら挑戦しやすい制度設計になっているということです。

もっとも、科目の内容は決してやさしくありません。理論は計算問題が中心で、数学の基礎が求められます。学習を始める前に、どの科目から手をつけるかを決めておくことが、挫折を防ぐ最大のコツです。

Point 科目別合格制のポイント
  • 一次試験は理論・電力・機械・法規の4科目
  • 科目ごとに合否が判定される科目別合格制
  • 合格した科目には有効期限があり、3年間を使って学習できる
  • 第一種・第二種の二次試験には科目別合格制度はない
  • 年間の学習計画を立てやすく、働きながらでも取り組みやすい

年2回の実施とCBT方式

試験は上期と下期の年2回実施されています。さらに、パソコンで受験するCBT方式と、従来の筆記方式のいずれかを選べる仕組みになっています。

たとえば令和8年度の上期試験では、CBT方式が2026年7月16日から8月9日まで、筆記方式が2026年8月30日に実施されるとされています。CBT方式は期間内で日時を選べるため、現場の繁忙期を避けて受験できる点が実務者にとって大きな利点です。

また、年2回受験できるということは、1年のうちに2度チャンスがあるということでもあります。科目別合格制と組み合わせれば、計画的に積み上げていく戦略が立てやすくなります。

受験手数料と申込み

受験手数料は、インターネット申込みの場合が7,700円(非課税)、郵送申込みの場合が8,100円(非課税)とされています。申込み方法や日程は年度によって変わりますので、最新の情報は電気技術者試験センターの受験案内で必ず確認してください

企業が資格取得を支援する場合、受験料そのものは大きな金額ではありません。むしろ効くのは、学習時間を確保できるかどうかです。

建設業でなぜ価値が高いのか

建設業に身を置く方にとって、電験三種はどのような意味を持つのか。施工管理の資格との関係から整理します。

電気工事施工管理技士との違いと相乗効果

電気工事施工管理技士は、工事を計画し、管理し、完成させるための資格です。これに対して電気主任技術者は、完成した設備を安全に使い続けるための保安を担う資格です。役割が異なるため、両方を持っていると担える仕事の幅が一気に広がります。

たとえば、電気設備工事の施工管理を担当しながら、完成後の保安管理まで自社で引き受けられる。工事から保守まで一貫して受注できる体制は、顧客にとっても心強く、価格競争から抜け出す武器になります。

求職者の立場から見ても、この組み合わせは強力です。工事だけ、保安だけではなく両方を語れる人材は市場に少なく、条件交渉でも有利に働きます。

ビル・工場・再エネ設備の保安需要

高圧受電設備を持つ建物は、全国に膨大な数があります。ショッピングセンター、病院、学校、ホテル、工場。そのすべてで保安の担い手が必要です。

加えて、太陽光発電設備の増加も需要を押し上げています。一定規模以上の発電設備には保安の体制が求められるためです。設備が存在する限り、仕事はなくなりません

さらに、電気自動車の充電設備や蓄電池の設置が広がれば、扱う設備の種類そのものが増えていきます。新しい技術が出るたびに保安の対象が増えるという構造は、この分野の将来性を支える要因です。

有資格者の在籍が受注条件になる場面

保安管理の業務を受託するには、有資格者の在籍が前提になります。つまり、人がいるかどうかが、そのまま受注可否を決めるということです。

この点は経営にとって重要です。1人採用できれば新しい事業の柱が立ち、1人辞めれば既存の契約が維持できなくなる。採用と定着が、そのまま売上に直結する職種だといえます。

採用と転職にどう活かすか

最後に、企業側と求職者側それぞれの実践的な動き方を整理します。

企業|外部採用と社内育成を両輪で回す

有資格者の中途採用は競争が激しく、待っているだけでは応募が来ません。現実的な戦略は、社内で取らせる仕組みを本気で作ることです。

電験三種は科目別合格制で3年間を使って学習できます。この特性を活かし、年間の学習計画を会社が一緒に立て、繁忙期を避けて受験させる。それだけで合格率は変わります。

OK 資格取得支援として効果が高い施策
  • 受験料・参考書代・講座費用の会社負担
  • 試験前の学習時間を勤務時間内に確保する
  • 合格科目ごとに一時金を支給し、途中で挫折させない
  • 合格後の資格手当を月額で明示しておく
  • 先に取得した社員が教える社内勉強会を定例化する

特に効果が大きいのが、科目合格ごとに報奨を出す仕組みです。4科目すべて合格するまで何も出ない設計では、途中で心が折れてしまいます。

企業|求人票での打ち出し方

有資格者を採用したい場合も、未経験者を育てたい場合も、求人票の書き方で応募数は大きく変わります。曖昧な表現を避け、数字と仕組みで語ることが重要です。

Check 求人票・面接で伝えたいこと
  • 資格手当の月額と、資格ごとの金額の差
  • 保安管理を受託している物件数と種類(工場・ビル・発電所など)
  • 電気工事施工管理技士など、他資格との併用者がいるか
  • 資格取得支援の具体的な内容と、直近の合格実績
  • 日常の業務内容と、緊急対応の頻度・体制

求職者|キャリアの広がりと会社の見極め

電験三種を取得すると、選択肢は建設業の枠を超えて広がります。ビル管理、工場の保全、電力会社の関連会社、再生可能エネルギー事業者。業種をまたいで通用する数少ない資格のひとつです。

会社を選ぶ際は、資格手当の金額だけでなく、実務経験を積める環境かどうかを確認してください。資格があっても実務の経験がなければ、責任のある立場は任されません。面接では「入社後にどの物件を担当することになりますか」と具体的に聞いてみてください。

また、先輩から引き継ぐ期間をどれくらい取ってもらえるかも重要です。設備の癖や過去のトラブル履歴は、書類だけでは分かりません。引き継ぎに時間をかける会社は、人を大切にする会社でもあります。

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まとめ

電気主任技術者は、電気事業法における自主保安体制の中核を担う存在として、事業場ごとの選任が義務づけられています。第三種は電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物(出力5千キロワット以上の発電所を除く)を対象とし、工場やビル、商業施設、太陽光発電所など、身の回りの多くの高圧設備をカバーします。一次試験は理論・電力・機械・法規の4科目で、科目別合格制により3年間を使って学習できます。

設備は増え続ける一方で、有資格者は簡単には増えません。採用と定着が、そのまま受注できる仕事の量を決める職種です。企業様には資格取得支援を仕組みとして整えることを、技術者の方には長く通用する武器としての取得を、それぞれおすすめします。

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