今さら聞けない「建設とは?」建築との違いや仕事内容を解説

「建設業界は、私たちの生活に不可欠な社会基盤を創る、やりがいの大きな仕事です。しかし、『建築や土木と何が違うの?』『どんな仕事があるの?』といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。この記事では、『建設とは何か』という基本から、業界の仕組み、具体的な仕事内容、そして人手不足を乗り越えるための最新の採用トレンドまで、分かりやすく解説します。貴社の採用戦略や、ご自身のキャリアを考える一助となれば幸いです。」

目次

そもそも「建設」とは?

「建設」という言葉は日常的に使われますが、その正確な意味を問われると、戸惑う方も少なくありません。まずは、混同されがちな「建築」「土木」との違いを明確にし、法律上の定義について見ていきましょう。

「建築」「土木」との根本的な違い

結論から言うと、「建設」は、「建築」と「土木」を包含する、より大きな枠組みの言葉です。それぞれの指す領域は以下のように整理できます。

建設:建物やインフラを「造り、建てる」こと全般を指す最も広い概念。建築工事と土木工事の両方を含みます。
建築:人が中に入って利用する「建物」を建てる工事です。具体的には、住宅、マンション、学校、病院、商業施設、オフィスビルなどが該当します。地面より上の構造物を扱うことが中心です。
土木:人々が生活するための基盤(インフラ)を整備する工事です。道路、橋、トンネル、ダム、上下水道、鉄道、空港、港湾などが含まれます。地面や水に関わる大規模な工事が多くなります。

このように、建設業界は非常に幅広い領域をカバーしており、私たちの生活のあらゆる場面を支えています。

POINT
  • 建設 = 建築 + 土木
  • 建築 (Architecture) = 人が入る「建物」を造る
  • 土木 (Civil Engineering) = 社会の「基盤」を造る

法律で定められた建設業の29業種

建設工事を行うには、建設業法(建設工事の適正な施工と発注者の保護などを目的とした法律)に基づき、国や都道府県から「建設業許可」を受ける必要があります。

この法律では、建設工事を29の専門分野(業種)に分類しています。自社が請け負う工事の種類に応じて、対応する業種の許可を取得しなければなりません。2020年の法改正で「解体工事業」が新設され、28業種から29業種体制となりました。

【建設業の29業種一覧】

  1. 土木一式工事業
  2. 建築一式工事業
  3. 大工工事業
  4. 左官工事業
  5. とび・土工工事業
  6. 石工事業
  7. 屋根工事業
  8. 電気工事業
  9. 管工事業
  10. タイル・れんが・ブロック工事業
  11. 鋼構造物工事業
  12. 鉄筋工事業
  13. 舗装工事業
  14. しゅんせつ工事業
  15. 板金工事業
  16. ガラス工事業
  17. 塗装工事業
  18. 防水工事業
  19. 内装仕上工事業
  20. 機械器具設置工事業
  21. 熱絶縁工事業
  22. 電気通信工事業
  23. 造園工事業
  24. さく井工事業
  25. 建具工事業
  26. 水道施設工事業
  27. 消防施設工事業
  28. 清掃施設工事業
  29. 解体工事業

採用担当者としては、自社がどの業種の許可を持っているかを把握し、求職者に対して専門性を明確に伝えることが重要です。

建設業界の全体像と社会的な役割

次に、建設業界が社会でどのような役割を果たし、どれほどの規模を持つのかを見ていきましょう。

社会インフラを支える重要な仕事

建設業界の最も重要な役割は、社会インフラの整備と維持管理です。私たちが毎日利用する道路や鉄道、安全な水を提供する上下水道、電気やガスといったライフライン、そして暮らす家や働くオフィスまで、すべて建設業がなければ成り立ちません。

また、台風や地震などの自然災害が発生した際には、インフラの緊急復旧や復興工事という極めて重要な使命を担います。人々の安全・安心な暮らしを守る、社会貢献性の非常に高い産業と言えます。

約70兆円の巨大な市場規模と経済効果

建設業界は、日本経済を支える基幹産業の一つです。国土交通省の発表によると、令和6年度(2024年度)の建設投資額は、約70兆3,200億円に達する見通しです(※1)。これは国の一般会計予算(約112兆円)の6割以上に匹敵する巨大な市場規模です。

建設投資は、資材メーカーや機械メーカー、輸送業など、関連する多くの産業に仕事を生み出すため、経済的な波及効果が非常に大きいのが特徴です。建設業界が活発であることは、日本経済全体の活性化に直結します。

(※1 出典:国土交通省「令和6年度(2024年度)建設投資見通し」)

建設業界の主な仕事内容と職種

巨大な建設プロジェクトは、多くの専門家たちの連携によって成り立っています。ここでは、代表的な仕事内容と職種をご紹介します。

プロジェクトの司令塔「施工管理」

施工管理は、建設プロジェクト全体を管理・監督する、現場の司令塔とも言える重要な仕事です。主な役割は、以下の「5大管理」を円滑に進めることです。

品質管理 (Quality Control):設計図通りに、求められる品質の構造物ができているかを確認します。
原価管理 (Cost Control):決められた予算内で工事を完成させられるよう、人件費や材料費などを管理します。
工程管理 (Schedule Control):納期までに工事を終えられるよう、作業のスケジュールを計画・調整します。
安全管理 (Safety Control):現場で働く作業員の安全を確保するため、危険箇所を点検し、事故防止策を徹底します。
環境管理 (Environment Control):工事現場周辺の環境に配慮し、騒音や振動、廃棄物などを適切に管理します。

プロジェクトを成功に導く責任あるポジションであり、国家資格である「施工管理技士」を取得することで、キャリアアップを目指せます。

専門技術で現場を創る「技能労働者」

技能労働者(技能者、職人とも呼ばれる)は、専門的な技術を駆使して、実際にものづくりを行う現場の主役です。代表的な職種には以下のようなものがあります。

とび工:高所での足場の組立・解体や、鉄骨の組立てなどを行います。
大工:木材を加工し、建物の骨組みや内装などを造ります。
鉄筋工:建物の骨格となる鉄筋を、設計図通りに組み立てます。
左官:壁や床にコンクリートや漆喰などを塗り、仕上げます。
配管工:水道やガス、空調などの配管を設置します。

これらの専門技術は、一朝一夕で身につくものではなく、長年の経験が求められます。彼らの高い技術力なくして、高品質な建設物は生まれません。

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設計から営業まで多様なキャリアパス

建設業界の仕事は、現場だけではありません。以下のように、多様なキャリアパスが存在します。

設計:顧客の要望を基に、建物のデザインや構造、設備を計画し、図面を作成します。
積算:設計図から必要な材料や人件費を算出し、工事全体の費用を見積もります。
営業:官公庁や民間企業から工事案件を受注します。
研究開発:新しい工法や材料、技術などを開発します。

このように、文系・理系を問わず、様々な強みを持つ人材が活躍できるフィールドが広がっています。

建設業界が直面する課題とこれからの展望

大きな社会的役割を担う建設業界ですが、一方で深刻な課題にも直面しています。しかし、その課題解決に向けた変革も力強く進んでいます。

深刻化する人手不足と高齢化の現状

建設業界が抱える最大の課題が、深刻な人手不足と就業者の高齢化です。厚生労働省の統計によると、建設業の有効求人倍率は常に高い水準で推移しており、人手の確保が非常に困難な状況です。

また、全産業の中でも高齢化が著しく、若手への技術継承が喫緊の課題となっています。このままでは、社会インフラの維持管理さえ困難になりかねません。

働き方を変える「建設DX」の最新動向

この厳しい状況を打破する切り札として、国を挙げて推進されているのが「建設DX(デジタル・トランスフォーメーション)」です。最新のデジタル技術を活用し、生産性の向上と働き方改革を目指す取り組みです。

BIM/CIM(ビム/シム):3次元モデルにコストや仕上げなどの情報を追加したデータベースを活用し、設計から施工、維持管理までを一元管理する手法。関係者間の情報共有が円滑になり、手戻りを防ぎます。
ICT建機:GPSやセンサーを搭載した建設機械が、設計データに基づき半自動で施工を行います。熟練の技術がなくても、高精度な施工が可能になります。
ドローン:上空から現場全体を撮影し、短時間で高精度な測量(3D測量)を実施。進捗管理や安全点検にも活用されます。
AI(人工知能):画像認識技術を用いて、コンクリートのひび割れや鉄筋の配置を自動で検査するなど、品質管理の効率化に貢献します。

これらの技術は、「きつい・汚い・危険」といった従来の3Kイメージを払拭し、スマートで魅力的な産業へと転換させるポテンシャルを秘めています。

これからの建設業界で求められる人材像

業界が大きな変革期にある今、求められる人材像も変化しています。

最新技術を使いこなすデジタル人材

建設DXの進展に伴い、BIM/CIMやドローン、各種ソフトウェアを使いこなせるデジタル人材の需要が急速に高まっています。

これまでは建設業界に縁がなかったIT分野の知識やスキルを持つ人材が、新たな価値を生み出す存在として期待されています。建設の専門知識とデジタルスキルを併せ持つ人材は、今後ますます市場価値が高まります。

多様性を束ねるマネジメント能力

外国人材や女性、若手からベテランまで、現場の構成員はますます多様化していきます。こうした多様なバックグラウンドを持つチームをまとめ、一人ひとりの能力を最大限に引き出すマネジメント能力は、これからのリーダーに不可欠なスキルです。

異なる文化や価値観を尊重し、円滑なコミュニケーションを促す力が、プロジェクトの成否を左右します。

まとめ:未来を創る建設業界で活躍するために

この記事では、「建設とは何か」という基本的な定義から、業界の現状、課題、そして未来の展望までを解説しました

建設業界は、今まさに大きな変革の時代を迎えています。課題が多い一方で、それは新しい挑戦ができるチャンスに満ちているとも言えます。社会を支えるやりがいと、自らの手で未来を創るダイナミズム。それが、今の建設業界で働くことの魅力です。

この記事が、企業の採用戦略を練る上で、また、この業界でのキャリアを考える方にとって、有益な情報となれば幸いです。

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