
「型枠大工の求人を出しているが、まったく応募が来ない」「今いる職人が60代で、辞められたら現場が回らない」。
このようなお悩みを抱えている経営者様や人事担当者様は、非常に多くいらっしゃいます。国土交通省の資料によれば、建設業の就業者数は令和6年平均で478万人、うち技能者は296万人です。ピークだった平成9年の685万人からおよそ3割減り、55歳以上が36.6%を占める一方で29歳以下は11.9%にとどまっています。型枠大工はその中でも、担い手の高齢化がとりわけ早く進んでいる職種のひとつです。
型枠大工はコンクリート構造物の「形」を決める仕事

型枠大工は、コンクリートを流し込むための型(せき板)とそれを支える支保工をつくる職種です。木造住宅を建てる建築大工とは、扱う対象も求められる技能も異なります。
図面を読み、合板を「拾い出す」ところから始まる
型枠大工の仕事は、現場で釘を打つ前から始まっています。設計図から柱・梁・壁・床の寸法を読み取り、必要な合板と桟木の枚数・寸法を算出する拾い出しという作業です。ここで数量を誤ると、材料が足りずに工程が止まるか、余剰が産業廃棄物になります。
建て込み・打設・解体まで、工程は大きく4段階
現場での作業は、①加工したパネルを所定の位置に建て込む、②セパレーターやフォームタイで間隔と強度を確保する、③コンクリート打設に立ち会う、④硬化後に型枠を解体する、という流れで進みます。
見落とされやすいのが③と④です。打設中に型枠が動けば構造物の形が狂い、解体が早すぎればコンクリートが欠けます。型枠大工の仕事は「組む」だけでなく「見届けて外す」までを含むとご理解いただくのが正確です。
解体した型枠は洗って補修すれば再び使えます。合板の転用回数をどれだけ伸ばせるかは材料費に直結するため、丁寧に外せる職人は会社の利益に貢献していることになります。この「外し方のうまさ」は数字に表れにくい技能ですが、現場を知る人ほど評価する部分です。
鉄筋工・とび職との違いはどこにあるか
躯体工事は、とび職が足場と重量物を、鉄筋工が鉄筋を、型枠大工が型枠を担当する分業で成り立っています。鉄筋が建物の強度を担うのに対し、型枠は寸法と仕上がり面を担います。打ち放しコンクリートの美しさは、型枠の精度そのものです。
この3職種は同じ躯体を順番に触るため、相互理解のある職人は現場で重宝されます。採用の場面では、「他職種との連携が学べる」という点も訴求材料になります。

型枠支保工には法令で定められた要件がある

型枠工事は、労働安全衛生法令が細かく手続きを定めている分野です。有資格者や届出が欠けたまま着手すると、工事そのものが止まりかねません。
型枠支保工の組立て等作業主任者は選任が義務
労働安全衛生法施行令第6条第14号により、型枠支保工の組立て又は解体の作業には作業主任者を選任しなければなりません。資格は技能講習の修了によって得られ、労働安全衛生規則第247条がその職務を定めています。
- ✓型枠支保工の組立て・解体の作業には選任が義務(令第6条第14号)
- ✓資格は「型枠支保工の組立て等作業主任者技能講習」の修了で取得する
- ✓作業方法の決定、材料の欠点の有無の点検、器具工具の点検などが職務(安衛則第247条)
- ✓社内に修了者がいなければ、その作業に着手できない
なお、作業主任者は現場ごとに選任し、氏名と職務を作業場の見やすい場所に掲示する運用が一般的です。修了証を持っているだけでは足りず、実際にその作業を指揮していることが求められる点にご注意ください。
支柱の高さ3.5m以上は労働基準監督署への届出が必要
労働安全衛生法第88条および労働安全衛生規則第85条・第86条・別表第7により、支柱の高さが3.5m以上の型枠支保工を設置する場合は、工事開始の30日前までに機械等設置届(様式第20号)を所轄の労働基準監督署へ提出することとされています。
30日前という期限は、受注から着工までの日程を直接縛ります。届出の要否を判断できる人材が社内にいるかどうかは、工程管理上の実務ポイントとお考えください。
組立図と打設時の点検が事故を防ぐ
労働安全衛生規則第240条は型枠支保工の組立図の作成を、第244条はコンクリート打設の作業における措置を定めています。打設前に型枠支保工を点検し、異常があれば補修すること、作業中に異常が生じたときはただちに作業を中止することが求められます。
型枠支保工の倒壊は、建設業の重大災害の典型的な類型のひとつです。手順を省いた現場ほど事故が起きやすいという前提で、書面と点検を残す運用にしておくのが安全です。
資格でキャリアと収入の伸び方が変わる

型枠大工は経験年数がものを言う職種ですが、経験を「見える形」にできるかどうかで評価は大きく変わります。
型枠施工技能士は1級・2級・3級の3区分
国家検定である技能検定には「型枠施工」職種があり、作業名は型枠工事作業です。中央職業能力開発協会の受検案内によれば、1級・2級・3級が実施されています。
- ✓3級…実務経験がなくても受検でき、在学中の学生も対象になる
- ✓2級…実務経験2年以上(3級合格者は年数が短縮される)
- ✓1級…実務経験7年以上。上級技能者が通常有すべき技能の程度とされる
- ✓実技は、せき板の割付け、型枠の下ごしらえ、型枠及び型枠支保工の組立て、型枠の解体
CCUSのレベル評価で経験が数字になる
建設キャリアアップシステム(CCUS)では、就業日数・保有資格・職長経験をもとに技能者を4段階で評価します。レベル1が白、レベル2が青、レベル3がシルバー、レベル4がゴールドのカードとなり、レベル4は高度なマネジメント能力を有する技能者と位置づけられています。
国土交通省の資料では、令和8年6月30日時点の判定件数はレベル4が68,952件、レベル3が48,724件、レベル2が55,251件となっています。能力評価基準は50分野で策定されており、型枠もその対象です。

「経験20年です」より「レベル4のゴールドカードです」のほうが、元請にも求職者にも一瞬で伝わります。
登録型枠基幹技能者は実務10年・職長3年から
登録基幹技能者は、現場で職長をまとめる立場の技能者を認定する制度です。建設業振興基金によれば、受講資格は実務経験10年以上かつ職長経験3年以上とされています。
同基金の公表値では、令和8年3月31日現在の登録型枠基幹技能者は6,323名、全種目の合計は91,598名です。経営事項審査でも加点対象となるため、企業にとっては受注面の価値も持ちます。
型枠大工を採用・育成するために企業がすべきこと


求人票を出すだけでは応募は集まりません。型枠大工という職種の実像を、求職者が判断できる形に翻訳する必要があります。
「きつい」の中身を分解して伝える
型枠大工は重量物を扱い、屋外作業も多い職種です。この事実を隠すと、入社後の早期離職につながります。むしろ何が大変で、それに対して会社が何をしているかをセットで示すほうが、応募の質は上がります。
- ✓週休二日制の実施状況(現場ごとの実績で書く)
- ✓加工場での作業と現場作業の比率
- ✓揚重機や電動工具など、負担を減らすために導入している設備
- ✓移動時間・直行直帰の可否と、それが給与に含まれるかどうか
あわせて、型枠大工の仕事が「建物の形をつくる仕事」であることも言葉にしてください。完成後は壁の中に隠れてしまう工程だからこそ、何を担っているのかを説明されないと、求職者には伝わりません。
3級技能検定を入口にした育成計画をつくる
未経験者を採用する場合、最初の1年で何を身につけさせるかが決まっていないと、現場任せの指導になりがちです。3級技能検定は実務経験を問わず受検できるため、入社1年目の到達目標として設定しやすいという利点があります。
資格手当と評価制度を文書にする
資格取得を推奨していても、受検料の負担や合格後の手当が口約束のままでは、職人は動きません。受検料・講習費の会社負担、合格時の一時金、月額の資格手当を規程として明文化することをおすすめします。
CCUSのレベルと社内等級を連動させておくと、評価の根拠を客観的な第三者基準に置けます。これは「なぜあの人のほうが給与が高いのか」という不満を減らすうえでも有効です。
とはいえ、制度を整えても母集団そのものが集まらないという現実もあります。型枠大工のような専門職種では、求人媒体だけでなく、職種を理解している人材紹介の力を借りることが近道になる場合があります。
まとめ
型枠大工は、コンクリート構造物の寸法と仕上がりを決める、代替のきかない職種です。同時に、型枠支保工の組立て等作業主任者の選任や支柱の高さ3.5m以上の届出など、法令が細かく手続きを定めている分野でもあります。
担い手が減っている一方で、コンクリート構造物がなくなることはありません。需要が残り、供給が細る職種では、残った職人一人あたりの価値が上がっていきます。採用が難しいという事実は、裏を返せば確保できた企業が強くなるということでもあります。
- ✓型枠支保工の組立て・解体には作業主任者の選任が必要(令第6条第14号)
- ✓支柱の高さ3.5m以上は工事開始30日前までに労働基準監督署へ届出
- ✓型枠施工技能士は1級・2級・3級。3級は実務経験を問わず受検できる
- ✓CCUSレベル4・登録型枠基幹技能者(実務10年・職長3年)がキャリアの到達点
- ✓採用では「きつさ」を隠さず、設備と休日と育成計画をセットで示す
資格は、職人にとっては収入の根拠に、企業にとっては受注の根拠になります。育成の道筋を先に描いておくことが、結果として採用の強さにつながるとお考えいただければと思います。
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