【解体工】許可が独立業種に!資格要件とキャリア・採用の全戦略

「解体の仕事は増えているのに、有資格者がいなくて受けられない」「専任技術者が一人しかおらず、退職されたら業種ごと止まってしまう」。

このようなお悩みを抱えている経営者様や人事担当者様は、非常に多くいらっしゃいます。建物には必ず寿命があり、解体の需要そのものは減りません。国土交通省の資料によれば建設業の就業者数は令和6年平均で478万人、ピークの平成9年685万人からおよそ3割減っており、担い手不足はむしろ深刻化しています。

そして解体工事は、近年もっとも制度が厳しくなった分野のひとつです。建設業許可の独立業種化、建設リサイクル法の登録、そして石綿規制。本記事では、これらの要件と、人材の採用・育成の打ち手を整理してご説明いたします。

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目次

解体工事業は、独立した建設業許可の業種

かつてはとび・土工工事業で対応できましたが、その時代はすでに終わっています。

平成28年の法改正で解体工事業が新設されて以降、制度は一貫して専門性を求める方向に動いてきました。許可、登録、調査、作業主任者と、必要なものが段階的に積み上がっています。

とび・土工の経過措置は令和3年6月30日で終了した

解体工事業は建設業許可の29業種のひとつで、工事の内容は「工作物の解体を行う工事」と定義されています。とび・土工工事業の技術者を解体工事業の技術者とみなす経過措置は、当初令和3年3月31日まで、その後令和3年6月30日まで延長されたうえで終了しています。

つまり現在は、解体工事業として仕事を受けるなら、解体工事業に対応した技術者を自社で確保しておく必要があります。この点を見落としたまま体制が手薄になっている会社は少なくありません。

専任技術者が一人だけという体制は、その一人の退職や病気で業種そのものが止まることを意味します。二人目を育てておくことは、採用というより事業継続の備えだとお考えください。

主任技術者になれる資格は複数ある

国土交通省の資料によれば、解体工事業の技術者になり得る資格は次のとおりです。監理技術者と主任技術者で範囲が異なります。

Check 解体工事業の技術者資格
  • 監理技術者…1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士、技術士(建設部門ほか)
  • 主任技術者…上記に加え、2級土木施工管理技士(土木)、2級建築施工管理技士(建築・躯体)
  • とび技能士(1級・2級)。ただし2級は合格後、解体工事に関し3年以上の実務経験が必要
  • 解体工事施工技士(建設リサイクル法に基づく国土交通大臣登録の試験)

また、技術検定に係る資格については平成27年度までの合格者は、資格とは別に解体工事に関する1年以上の実務経験を有しているか、登録解体工事講習を受講していることが必要とされています。

「それだけを解体する工事」は各専門工事に当たる

区分の考え方として、それぞれの専門工事において建設される目的物について、それのみを解体する工事は各専門工事に該当するとされています。総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を解体する工事は、土木一式工事や建築一式工事に該当します。

この線引きは、どの許可で受注できるかを決める実務的な論点です。営業段階で判断できる人材がいるかどうかは、会社の受注力に直結します。

たとえば内装だけを撤去する工事と、建物一棟を解体する工事では、必要な許可も配置する技術者も変わります。見積りの段階で判断を誤ると、後から体制を組み直すことになります。

建設リサイクル法と石綿規制が、現場の前提を決めている

解体は「壊す」前にやることが多い工事です。書類と調査が終わらなければ着工できません。

解体工事業者は都道府県知事の登録が必要

建設リサイクル法により、解体工事業者は当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければなりません。土木工事業・建築工事業・とび・土工工事業の建設業許可業者は除かれます。

登録の要件には、解体工事の施工の技術上の管理をつかさどる技術管理者の選任が含まれます。国土交通省の資料では、技術管理者の職務は解体工事の施工に従事する他の者の監督を行うことであり、これが可能であれば複数の工事現場を兼務することは差し支えないとされています。

届出が必要になる工事の規模は数字で決まっている

建設リサイクル法の対象建設工事は、規模の基準が明確に定められています。特定建設資材はコンクリート、コンクリートと鉄から成る建設資材、木材、アスファルト・コンクリートの4種です。

Point 建設リサイクル法の対象建設工事の規模
  • 建築物の解体…床面積の合計 80㎡以上
  • 建築物の新築・増築…床面積の合計 500㎡以上
  • 建築物の修繕・模様替等(リフォーム等)…請負金額 1億円以上
  • 建築物以外の工作物(土木工事等)…請負代金の額 500万円以上

建築物の解体については、正確には「特定建設資材を用いた建築物に関する解体工事であって、建築物の構造耐力上主要な部分の全部又は一部について、床面積の合計で80㎡以上を解体する工事」とされています。

石綿の事前調査は2段階で厳しくなった

厚生労働省の資料によれば、令和5年10月1日以降着工の工事から、建築物の解体等の作業を行うときは有資格者による事前調査が必要とされています。さらに、令和8年1月1日以降着工の工事からは、工作物の解体等の作業についても資格者による事前調査が必要になりました。

工作物については、反応槽、加熱炉、ボイラー及び圧力容器、配管設備、焼却設備、貯蔵設備、発電設備、変電設備、煙突、トンネルの天井板など、告示に掲げる特定工作物が対象です。有資格者がいなければ、工事の入口で止まります

プラントや工場設備の解体を手がける会社にとっては、これが受注要件そのものになりました。工作物石綿事前調査者を社内に持てるかどうかが、扱える案件の範囲を決めます。

現場では作業主任者の選任も義務づけられる

書類が整っても、現場に有資格者を配置できなければ作業は始められません。

コンクリート造の工作物の解体等作業主任者

労働安全衛生法施行令第6条第15号の5により、高さが5メートル以上のコンクリート造の工作物の解体または破壊の作業には、作業主任者を選任しなければなりません。資格は技能講習の修了によって得られます。

5メートルという基準は、住宅の2階建てを超える規模の建物であれば多くが該当します。実務上、ほぼ必須の資格とお考えいただくのが正確です。

あわせて、建築物の骨組みや塔であって高さが5m以上の金属製の部材で構成されるものの組立て・解体・変更の作業についても、作業主任者の選任が必要とされています。鉄骨造の解体を扱うなら、こちらも欠かせません。

石綿作業主任者と特定化学物質作業主任者

労働安全衛生法施行令第6条第23号は、石綿またはこれを重量の0.1%を超えて含有する製剤その他の物を取り扱う作業について、石綿作業主任者の選任を定めています。同第18号は、別表第三に掲げる特定化学物質を製造し、または取り扱う作業について、特定化学物質作業主任者の選任を定めています。

解体は、建材に何が含まれているか分からない状態から始まる工事です。だからこそ、調べる資格と、扱う資格の両方が必要になります。

登録解体基幹技能者は1,364名

登録基幹技能者は、現場で職長をまとめる立場の技能者を認定する制度です。建設業振興基金によれば、受講資格は実務経験10年以上かつ職長経験3年以上とされています。

同基金の公表値では、令和8年3月31日現在の登録解体基幹技能者は1,364名、全51種目の合計は91,599名です。CCUSでも、レベル1が白、レベル2が青、レベル3がシルバー、レベル4がゴールドのカードとして評価されます。

解体の人材を採用・育成するために企業がすべきこと

解体は「壊すだけの仕事」という誤解が最も強い職種です。その誤解を解くところから始まります。

資格が受注そのものを決めることを説明する

解体工事業は、専任技術者がいなければ許可が維持できず、事前調査の有資格者がいなければ工事に着手できません。つまり資格を取ることが、会社の受注できる範囲を直接広げるという関係が、他のどの職種よりもはっきりしています。

この関係を本人に説明したうえで、受験料と学習時間を会社が負担する形にすれば、資格取得は個人の努力から会社の投資に変わります。

工作物の石綿調査者は、今なら希少な人材になれる

工作物についての事前調査が必要になったのは令和8年1月1日からです。制度が始まったばかりで、有資格者の層が極端に薄い時期にあります。

Check 求人票に書くと効くこと
  • 扱う工事(木造住宅/RC造/プラント・工作物)
  • 重機を扱う仕事か、手壊しの比率はどれくらいか
  • 取得を支援する資格の具体名(解体工事施工技士、石綿調査者、作業主任者)
  • 分別解体や粉じん・振動対策にどんな設備を導入しているか

今から資格を取る人材にとっては、市場価値が最も上がりやすいタイミングです。これは求職者に対する明確な訴求材料になります。

「壊す仕事」ではなく「分ける仕事」として伝える

建設リサイクル法が求めているのは分別解体です。コンクリート、木材、アスファルト・コンクリート、金属をそれぞれ分けて再資源化する。壊す速度ではなく、分ける精度が問われる仕事だという説明のほうが、実態に近いはずです。

重機で一気に潰せば早いが、それでは分別ができない。だから手で外せるものは先に外す。この「手間をかける理由」を説明できる職長がいる現場は、産業廃棄物の処分費まで含めた利益が違ってきます。

近隣への配慮、粉じんと騒音の管理、書類の正確さ。解体は段取りと気配りの仕事でもあります。この点を丁寧に伝えられる会社は、他業種からの転職者にも届きます。

とはいえ、伝える相手に届かなければ始まりません。解体のように資格要件が複雑な職種では、求人媒体だけでなく、制度を理解している人材紹介の力を借りることが近道になる場合があります。

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まとめ

解体工事業は、とび・土工工事業からの経過措置が令和3年6月30日で終了し、完全に独立した業種になりました。加えて建設リサイクル法の登録と技術管理者、石綿の事前調査と作業主任者と、必要な資格が何層にも重なっています。

見方を変えれば、有資格者を揃えられた会社だけが受けられる仕事が増えているということです。採用の難しさは、確保できた企業の強さの裏返しでもあります。

Point この記事の要点
  • とび・土工工事業の技術者による経過措置は令和3年6月30日で終了
  • 建設リサイクル法の届出は解体80㎡以上、新築増築500㎡以上など
  • 解体工事業者は都道府県知事の登録と技術管理者の選任が必要
  • 高さ5m以上のコンクリート造工作物の解体には作業主任者が必要(令第6条第15号の5)
  • 石綿の事前調査は建築物が令和5年10月1日、工作物が令和8年1月1日から有資格者に限られる

資格は、職人にとっては収入の根拠に、企業にとっては受注そのものの根拠になります。取得の順番を先に描いておくことが、結果として事業の継続性につながるとお考えいただければと思います。

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