
「舗装の職人を採りたいが、腕をどう評価すればいいのか分からない」「若手に取らせる資格が思いつかない」。
このようなお悩みを抱えている経営者様や人事担当者様は、非常に多くいらっしゃいます。実はこれには理由があります。舗装には、国家検定である技能検定の職種が存在しません。大工にも左官にもある「◯◯技能士」という物差しが、舗装にはないのです。
舗装には技能士がいない。物差しは別のところにある

技能検定の一覧に舗装という職種はありません。ではどう評価されているのでしょうか。
これは舗装の技能が単純だという意味ではありません。アスファルト混合物は温度が下がると締め固まらなくなるため、敷き均しから転圧までを限られた時間内に終える段取りが求められます。時間との勝負である点が、他の工種と大きく違います。
技能検定に「舗装」職種は存在しない
中央職業能力開発協会の受検案内および厚生労働省の職種一覧を確認すると、舗装という名称の技能検定職種は実施されていません。関連するものとしては路面標示施工という職種があり、溶融ペイントハンドマーカー工事作業と加熱ペイントマシンマーカー工事作業の2作業が、単一等級で実施されています。
つまり、舗装そのものの腕前を国家検定で示すことはできません。この事実を知らないまま「技能士を持っている人を採りたい」と考えると、いつまでも採用が進まないことになります。
建設業許可の「舗装工事業」
国土交通省の資料によれば、舗装工事業の工事の内容は「道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事」とされ、例示にはアスファルト舗装工事、コンクリート舗装工事、ブロック舗装工事、路盤築造工事が挙げられています。
区分の考え方として、ガードレール設置工事はとび・土工・コンクリート工事に該当するとされています。道路工事とひとくくりにすると、許可の区分を誤ることがあります。
腕は「乗れる機械」で示される
舗装の現場では、路盤を敷き均すモーター・グレーダー、混合物を敷き均すアスファルト・フィニッシャー、締め固めるロード・ローラーやタイヤ・ローラーと、工程ごとに機械が変わります。
加えて、フィニッシャーの後ろで縁石際を人力で仕上げる作業、温度を測る作業、合図をする作業と、機械に乗らない役割も多くあります。未経験者はここから入り、順に機械へ上がっていくのが一般的です。

機械に乗るために必要な資格を整理する

舗装機械には、掘削用の重機とは異なる扱いが定められています。ここは誤解の多い部分です。
ローラーは技能講習ではなく特別教育
労働安全衛生法施行令の別表第7第4号は締固め用機械で、ローラーなどが該当します。そして労働安全衛生規則第36条第10号により、この第4号の機械で動力を用い、かつ不特定の場所に自走できるものの運転(道路上を走行させる運転を除く)は特別教育の対象とされています。
注意が必要なのは、機体重量3トンという区分がここには適用されないという点です。3トン以上で技能講習となるのは、別表第7の第1号・第2号・第3号・第6号の機械であり、締固め用機械は機体重量にかかわらず特別教育です。
この誤解は現場でも根強く、「ローラーは3トン未満なら特別教育でいい」という説明を聞くことがあります。正しくは、締固め用機械は大きさを問わず特別教育の対象です。
- ✓第1号…整地・運搬・積込み用機械(ブルドーザー、モーター・グレーダー等)
- ✓第2号…掘削用機械
- ✓第3号…基礎工事用機械
- ✓第4号…締固め用機械(ローラー等)
- ✓第5号…コンクリート打設用機械
- ✓第6号…解体用機械
モーター・グレーダーは整地・運搬・積込み用機械
路盤を仕上げるモーター・グレーダーは、別表第7第1号の整地・運搬・積込み用機械に含まれます。この区分では機体重量3トン以上が就業制限業務となり、技能講習の修了などが必要になります。
同じ舗装の現場でも、機械によって必要な資格の種類が変わります。どの機械に誰を乗せるかは、法令の区分を把握したうえで決める必要があります。
2級建設機械施工管理技士は第4種・第5種が舗装向け
国家資格である建設機械施工管理技術検定の2級には、担当機械に応じた種別があります。舗装に直結するのは次の2つです。
- ✓第4種…締め固め建設機械。ロード・ローラー、タイヤ・ローラー、振動ローラー等
- ✓第5種…舗装用建設機械。アスファルト・プラント、アスファルト・デストリビューター、アスファルト・フィニッシャー等
国土交通省の資料によれば、令和6年度から1級の第一次検定は19歳以上、2級の第一次検定は17歳以上(いずれも受検年度末時点)であれば受検できるようになりました。実務経験を積む前に学科部分を取得できます。
公共工事では「舗装施工管理技術者」が名指しされる

技能士がいない代わりに、公共工事の入札で直接評価される資格があります。
1級28,264名、2級20,774名
一般社団法人日本道路建設業協会が実施する舗装施工管理技術者資格は1級・2級の2段階で、合格後に登録申請をすると資格者証が交付され、1級舗装施工管理技術者などと称することができます。
同協会の公表値では、2026年4月1日現在の登録状況は1級が28,264名、2級が20,774名、合計49,038名です。
約5万人という数字は、登録基幹技能者の全51種目合計91,599名と比べても相当な規模です。それだけこの資格が業界で実用されているということでもあります。
入札参加条件や総合評価の項目になっている
同協会によれば、発注者である国土交通省各地方整備局および各地方自治体等では、総合評価落札方式における配置技術者の能力評価項目に採用したり、一般競争入札の入札参加条件に舗装施工管理技術者の現場専任を求めるなどの活用が増加しているとされています。
つまりこの資格は、本人の評価にとどまらず、会社が入札に参加できるかどうかを左右します。資格取得の支援が、そのまま受注力への投資になるという構図です。

「資格を取れ」ではなく「あなたが取ると、この案件に入れるようになる」と言えるのが、この職種の強みです。
点検は5年に1回、全路線・全車線
国土交通省の舗装点検要領(平成29年3月、道路局国道・防災課)では、舗装の健全性の診断について、アスファルト舗装では区分Ⅰ(健全)、区分Ⅱ(表層機能保持段階)、区分Ⅲ(修繕段階)の3区分が示されています。
舗装は、橋やトンネルに比べて老朽化が話題になりにくい分野です。しかし毎日走行の荷重を受け続けており、劣化は着実に進みます。修繕需要が語られにくいだけで、なくなるわけではありません。
舗装の人材を採用・育成するために企業がすべきこと


分かりやすい資格がないからこそ、会社が物差しを用意できると強くなります。
「どの機械に乗れるようになるか」で求人を書く
技能士という肩書きがない以上、求職者が自分の成長を実感できる指標は機械です。1年目でローラー、3年目でフィニッシャー、5年目で施工管理というように、乗れる機械で段階を示すのが最も伝わります。
あわせて、特別教育や技能講習は数日で修了できるものが多い点も伝える価値があります。入社してすぐに一つ資格が増えるという体験は、定着の初速を上げます。
- ✓保有している機械の具体名と台数
- ✓公共工事と民間工事の比率
- ✓夜間工事の有無と、その場合の手当・勤務体系
- ✓資格取得支援の範囲(特別教育・技能講習・舗装施工管理技術者の受験料)
夜間工事の条件を正直に書く
幹線道路の舗装は、交通量の関係で夜間に行われることが多くあります。この事実を隠すと入社後の早期離職につながります。むしろ夜間の割合、手当の金額、翌日の扱いを明記したほうが、納得して入ってくる人が増えます。
一方で、駐車場や工場構内、住宅の外構といった民間工事は日中の作業が中心です。会社によって働く時間帯がまったく違うため、ここを書き分けるだけで応募の質が変わります。
公共工事の資格要件を採用計画に組み込む
入札の参加条件に舗装施工管理技術者の現場専任が求められる案件では、有資格者がいなければ応札できません。つまり採用計画と受注計画は切り離せないということです。
何人の有資格者を、いつまでに、どの階層に配置するのか。ここまで設計できている会社は多くありません。だからこそ、先に設計した会社が有利になります。
逆にいえば、有資格者が退職した時点で応札できなくなる案件がある、ということでもあります。人材の確保は、そのまま事業の継続性の問題です。
とはいえ、計画を立てても人が集まらなければ動きません。舗装のように資格体系が分かりにくい職種では、求人媒体だけでなく、制度を理解している人材紹介の力を借りることが近道になる場合があります。
まとめ
舗装工には技能検定の職種がありません。その代わり、資格が乗る機械に紐づいており、どの機械を扱えるかが担当工程と処遇を決めます。分かりにくいようでいて、実は非常に明快な構造です。
さらに舗装施工管理技術者は、公共工事の入札参加条件や総合評価の項目として名指しされます。一人採ることが、応札できる案件を増やすことに直結する職種だとお考えください。
- ✓技能検定に「舗装」職種はない。関連するのは路面標示施工(単一等級)
- ✓ローラー等の締固め用機械は、機体重量にかかわらず特別教育(安衛則第36条第10号)
- ✓2級建設機械施工管理技士の第4種が締め固め、第5種が舗装用機械に対応
- ✓舗装施工管理技術者は1級28,264名、2級20,774名(2026年4月1日現在)
- ✓舗装点検要領では全路線・全車線を5年に1回点検することが基本とされている
分かりやすい資格がない職種では、会社が示す段階そのものが物差しになります。乗れる機械で成長を可視化することが、採用と定着の両方に効いてくるとお考えいただければと思います。
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