
「防水の職人が採れない」「今いる職人が辞めたら、対応できる工法が減ってしまう」
このようなお悩みを抱えている経営者様や人事担当者様は、非常に多くいらっしゃいます。国土交通省の資料によれば、建設業の就業者数は令和6年平均で478万人、うち技能者は296万人です。ピークだった平成9年の685万人からおよそ3割減り、55歳以上が36.6%を占める一方で29歳以下は11.9%にとどまっています。
防水工は「水の侵入経路」を断つ専門職

屋上、バルコニー、外壁の目地、地下。水が入り得る場所はすべて防水の対象です。
雨漏りの相談が来たとき、どこから入った水がどこへ流れているのかを読み解けるかどうかが、防水工の腕の見せどころです。漏れている場所と原因の場所が一致しないことは珍しくありません。
技能検定「防水施工」には9つの作業がある
国家検定である技能検定の「防水施工」職種は、工法ごとに作業が分かれています。中央職業能力開発協会の受検案内によれば、次の9作業がいずれも1級・2級で実施されています。
- ✓ウレタンゴム系塗膜防水工事作業/アクリルゴム系塗膜防水工事作業
- ✓シーリング防水工事作業
- ✓改質アスファルトシート常温粘着工法防水工事作業/同トーチ工法防水工事作業
- ✓FRP防水工事作業
- ✓アスファルト防水工事作業
- ✓合成ゴム系シート防水工事作業/塩化ビニル系シート防水工事作業
つまり防水工のキャリアは、どの工法から入るかで将来の守備範囲が変わります。求人票に「防水工」とだけ書くと、応募者は自分の経験が活きるかを判断できません。
工法ごとに現場も道具も変わる
アスファルト防水は熱や機械を使う重量級の工事で、主に大規模な屋上に用いられます。一方、ウレタン塗膜防水は液状の材料を塗り重ねる工法で、複雑な形状にも追従できます。シーリングは外壁の目地を埋める作業で、大規模修繕の現場では中心的な工程です。
近年は、屋上緑化や太陽光パネルの設置が進んだことで、防水層の上に何かが載る現場も増えました。後から設置物を撤去せずに補修できるかどうかまで考えて工法を選ぶ場面があり、材料の知識と建物の使われ方の理解が同時に問われる仕事になってきています。
建設業許可では「防水工事業」という独立した業種
国土交通省の資料によれば、建設業許可の業種は全29業種あり、防水工事業はそのひとつです。工事の内容は「アスファルト、モルタル、シーリング材等によつて防水を行う工事」と定義されています。
区分の考え方として、対象となるのは建築系の防水工事で、トンネル防水などの土木系防水工事は含まれないとされています。求人で「防水」と書くときは、建築系か土木系かを明示すると誤解が減ります。
なお、防水工事業の許可を持つ会社は、改修工事において足場や仮設、下地補修まで一体で請け負うことが多くあります。工事全体を組み立てられる人材の価値が高いのは、そのためです。
溶剤を扱う工法には法令上の義務がある

ウレタン塗膜防水やシーリングなど、有機溶剤を含む材料を扱う作業は、労働安全衛生法令の対象です。
有機溶剤作業主任者の選任が必要になる
労働安全衛生法施行令第6条第22号により、令別表第6の2に掲げる有機溶剤を製造し、または取り扱う業務には有機溶剤作業主任者を選任しなければなりません。資格は技能講習の修了によって得られます。
- ✓作業主任者の選任(令第6条第22号)
- ✓発散源対策として密閉設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置等を設ける
- ✓第1種・第2種の業務は6月以内ごとに1回、作業環境測定士による測定(記録は3年保存)
- ✓雇入れ時・配置替え時およびその後6月以内ごとに1回の特殊健康診断
- ✓設備を設けない場合は送気マスクまたは有機ガス用防毒マスクを使用させる
厚生労働省の資料では、タンク等の内部での作業については送気マスクに限るとされています。また、作業主任者名や有機溶剤の区分(第1種=赤、第2種=黄、第3種=青)の掲示も義務づけられています。
屋上・バルコニーは高所作業でもある
防水工事の現場の多くは高所です。労働安全衛生法施行令第6条第15号では、つり足場、張出し足場、または高さが5m以上の足場の組立て・解体・変更の作業について、足場の組立て等作業主任者の選任を定めています。
あわせて、夏場の屋上は極端な高温環境になります。熱中症対策として、休憩場所の確保、作業時間の調整、水分と塩分の補給体制をどう整えているかは、求職者にとって具体的な判断材料になります。
改修工事では石綿の確認も欠かせない
既存の防水層を撤去する改修工事は、石綿障害予防規則上の改修工事に当たり得ます。労働安全衛生法施行令第6条第23号は、石綿またはこれを重量の0.1%を超えて含有する物を取り扱う作業について、石綿作業主任者の選任を定めています。
防水そのものより、その下にある既存の層に何が使われているかが問題になる、とご理解いただくのが正確です。この確認ができる人材は、改修案件の受注可否を左右します。

資格でキャリアと収入の伸び方が変わる

防水は完成すると見えなくなる工事です。だからこそ、技能を客観的に示す手段が効いてきます。
言い換えれば、手を抜いても当日は誰にも分かりません。だからこそ、技能士やCCUSのレベルのように、第三者が確認できる形で技能を示せることの意味が大きくなります。
防水施工技能士は1級・2級
中央職業能力開発協会によれば、技能検定の受検に必要な実務経験は原則として1級が7年以上、2級が2年以上です。合格すると技能士と称することができます。
また、防水は「何年もつか」で評価される工事です。施工直後の見た目ではなく、10年後の状態が仕事の答え合わせになります。長く同じ建物を見続けている職人ほど、自分の施工の結果を知っているという強みがあります。

「防水やってます」より「ウレタンとシートの1級技能士です」のほうが、元請にも求職者にも一瞬で伝わります。
CCUSのレベル評価で経験を数字にする
建設キャリアアップシステム(CCUS)では、就業日数・保有資格・職長経験から技能者を4段階で評価します。レベル1が白、レベル2が青、レベル3がシルバー、レベル4がゴールドのカードとなります。
国土交通省の資料では、令和8年6月30日時点の判定件数はレベル4が68,952件、レベル3が48,724件、レベル2が55,251件です。能力評価基準は50分野で策定されており、防水もその対象分野に含まれます。
登録防水基幹技能者は2,495名
登録基幹技能者は、現場で職長をまとめる立場の技能者を認定する制度です。建設業振興基金によれば、受講資格は実務経験10年以上かつ職長経験3年以上とされています。
同基金の公表値では、令和8年3月31日現在の登録防水基幹技能者は2,495名。全51種目の合計91,599名のうち3%に満たない、希少な資格です。経営事項審査でも加点対象となります。
防水工を採用・育成するために企業がすべきこと


防水は工法の数が多い分、伝え方次第で応募の質が大きく変わります。
扱う工法を求人票に書き出す
「防水工募集」だけでは、アスファルト防水の経験者もシーリングの経験者も、自分向けかどうか判断できません。自社が主に扱う工法を列挙するだけで、届く相手が変わります。
- ✓主に扱う工法(アスファルト/シート/塗膜/シーリング)
- ✓新築と改修の比率、大規模修繕の実績
- ✓足場を自社で掛けるかどうか
- ✓資格取得支援の範囲(受検料・講習費・合格時の手当)
安全衛生の体制そのものを訴求材料にする
有機溶剤の作業環境測定、特殊健康診断、保護具の支給。これらは法令上の義務ですが、実際に回っているかどうかは会社によって差があります。きちんと運用している会社は、それ自体を採用の訴求点にできます。
複数工法を扱える職人を計画的に育てる
防水工事は工法ごとに繁忙期がずれます。屋上のアスファルト防水は天候に左右されますが、屋内のシーリングは比較的安定します。複数の工法を扱える職人がいれば、一年を通じて仕事を配分できます。
入社1年目はシーリングと下地処理、3年目で塗膜防水、5年目でシート防水と、扱える工法を増やしていく育成計画を紙にして示せる会社は、それだけで他社と差がつきます。
扱える工法が増えるほど、本人の年間の稼働も安定します。会社にとっての工程配分の話は、職人本人にとっては収入の安定の話でもある、という点をあわせて伝えてください。
とはいえ、育成のもとになる人材が集まらなければ計画は動きません。防水のように工法の幅が広い職種では、求人媒体だけでなく、職種を理解している人材紹介の力を借りることが近道になる場合があります。
まとめ
防水工は、建物を水から守る専門職です。技能検定が9つの作業に分かれていることが示すとおり、工法ごとに求められる技能が異なり、扱える工法の数がそのまま受注範囲になります。
同時に、有機溶剤を扱う工法では作業環境測定や特殊健康診断といった法令上の義務が明確に定められています。この体制を整えていること自体が、採用競争力になる時代です。
- ✓技能検定「防水施工」は9作業。いずれも1級・2級で実施される
- ✓有機溶剤を扱う業務には有機溶剤作業主任者の選任が必要(令第6条第22号)
- ✓作業環境測定は6月以内ごとに1回、特殊健診も6月以内ごとに1回
- ✓建設業許可の防水工事業は建築系が対象で、土木系防水は含まれない
- ✓登録防水基幹技能者は令和8年3月末で2,495名。合計91,599名の3%未満
資格は、職人にとっては収入の根拠に、企業にとっては受注の根拠になります。扱う工法を増やす順番を先に描いておくことが、結果として採用と定着の強さにつながるとお考えいただければと思います。
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