
「窓まわりの仕事は増えているのに、職人が足りない」「サッシの経験者を探しているが、そもそも母集団が小さい」。
このようなお悩みを抱えている経営者様や人事担当者様は、非常に多くいらっしゃいます。建設業の就業者数は国土交通省の資料で令和6年平均478万人、うち技能者は296万人。ピークだった平成9年の685万人からおよそ3割減っており、ガラス・サッシのような専門性の高い職種ほど影響が大きく出ます。
省エネ基準の全面義務化が、窓の仕事を変えた

制度が変わると、現場に求められる技能も変わります。窓まわりはその典型です。
窓は、建物の中で唯一「壁に穴を開けて、そこを塞ぐ」部位です。断熱も、気密も、水密も、遮音も、防犯も、すべてこの一点に集まります。求められる性能が上がれば、取り付ける側の責任も重くなります。
2025年4月1日から、原則すべての新築が対象
国土交通省の報道発表によれば、令和7年4月1日から原則全ての新築住宅・非住宅への省エネ基準適合が義務付けられました。適用が除外されるのは、床面積が10㎡以下の建築物の建築に限られます。
- ✓原則すべての新築住宅・非住宅が対象
- ✓2025年4月以降に工事に着手するものが対象
- ✓適用除外は床面積10㎡以下の建築物
- ✓同時に、建築確認が必要な対象範囲の拡大や構造関連規定の見直しも施行
つまり、基準を満たさない窓は使えなくなったということです。制度が仕様を引き上げたことで、現場で扱う建具そのものが変わりました。
あわせて同日から、建築確認が必要な対象範囲の拡大や、木造戸建住宅の壁量計算等の見直しも施行されました。設計側の前提が変わったことで、現場に届く建具の仕様も一段変わっています。
国も「樹脂サッシ」「Low-E複層ガラス」を名指ししている
国土交通省の省エネ住宅に関する資料では、熱の出入りが大きく熱が逃げやすい窓には樹脂製サッシやLow-E複層ガラスなどを取り入れることが挙げられています。非住宅についても、Low-Eガラス採用による高い断熱性能の実現が示されています。
複層ガラスは単板の数倍の重さになり、トリプルガラスならさらに増えます。二人で持てたものが持てなくなる、という物理的な変化が現場では起きており、揚重の段取りや補助具の導入が実務上の課題になっています。
改修市場にも同じ波が来ている
国土交通省の資料によれば、増改築の場合は増改築を行う部分のみに基準適合が求められ、増築部分の壁、屋根、窓などに一定の断熱材や窓等を施工することが必要とされています。
新築だけでなく、既存住宅の断熱改修や内窓の設置といった仕事が広がっています。新築が減る局面でも、窓の仕事は残るという構造は、求職者に伝える価値のある情報です。
内窓の設置は一日で完了する工事も多く、住まいながらの改修に向いています。施主と直接やり取りする機会も増えるため、技能に加えて説明する力が評価される場面が出てきます。

ガラス工とサッシ工は、制度上は別の業種

同じ窓をつくる仕事でも、建設業許可の上では扱いが分かれます。
ガラス工事業と建具工事業
国土交通省の資料によれば、ガラス工事業の工事の内容は「工作物にガラスを加工して取付ける工事」で、例示としてガラス加工取付け工事、ガラスフィルム工事が挙げられています。
一方、サッシ取付け工事は建具工事業に区分されます。建具工事業には金属製建具取付け工事、金属製カーテンウォール取付け工事、シャッター取付け工事、自動ドアー取付け工事なども含まれます。
この区分を知らないまま求人を出すと、業種名と仕事内容がずれて伝わります。応募者に向けては、許可業種名より「何を取り付けるのか」を書くほうが確実です。
技能検定は「ガラス施工」と「サッシ施工」
中央職業能力開発協会の受検案内によれば、この分野の技能検定は次のように実施されています。
- ✓ガラス施工(ガラス工事作業)…1級・2級
- ✓サッシ施工(ビル用サッシ施工作業)…1級・2級
サッシ施工は作業がビル用の1区分のみで、いずれの職種にも3級はありません。入口となる資格が制度上ほとんど用意されていないのがこの分野の特徴です。だからこそ、企業側の育成設計が他職種以上に重要になります。
カーテンウォールという大型の世界もある
高層ビルの外壁を構成するカーテンウォールも、この職種の守備範囲です。1枚あたりの重量が大きく、揚重機との連携や取付け精度の管理が求められます。住宅のサッシとは工事の規模がまったく異なります。
取付け精度はミリ単位で管理され、一枚のずれが上下階に影響します。図面を読み、墨を出し、レベルを追い込む作業は、仕上げ職というより躯体に近い性格を持っています。
資格でキャリアと収入の伸び方が変わる

有資格者が少ない分野では、資格そのものの希少価値が高くなります。
技能士は1級・2級。実務7年で1級
中央職業能力開発協会によれば、技能検定の受検に必要な実務経験は原則として1級が7年以上、2級が2年以上です。合格すると技能士と称することができます。
やり直しがきかない工種では、段取りの質が仕上がりを決めます。採寸、搬入経路の確認、養生、取付けの順番。この一連を自分で組み立てられるようになった時点で、職人としての単価が変わります。

「サッシやってます」より「1級サッシ施工技能士です」のほうが、元請にも求職者にも一瞬で伝わります。
CCUSでは「サッシ・カーテンウォール」「硝子」が対象分野
建設キャリアアップシステム(CCUS)では、就業日数・保有資格・職長経験から技能者を4段階で評価します。レベル1が白、レベル2が青、レベル3がシルバー、レベル4がゴールドのカードとなります。
国土交通省の資料では、令和8年6月30日時点の判定件数はレベル4が68,952件、レベル3が48,724件、レベル2が55,251件です。能力評価基準は50分野で策定されており、サッシ・カーテンウォールと硝子はいずれも対象分野に含まれています。
登録サッシ・カーテンウォール基幹技能者は300名
登録基幹技能者は、現場で職長をまとめる立場の技能者を認定する制度です。建設業振興基金によれば、受講資格は実務経験10年以上かつ職長経験3年以上とされています。
同基金の公表値では、令和8年3月31日現在の登録サッシ・カーテンウォール基幹技能者は300名です。全51種目の合計が91,599名であることを考えると、極端に少ない数字です。今取得すれば希少性が高いという言い方ができる、数少ない分野といえます。
ガラス・サッシの人材を採用・育成するために


母集団が小さい職種では、他社と同じ求人票を出しても届きません。制度の追い風をどう言葉にするかが勝負になります。
「仕事が増える理由」を制度から説明する
2025年4月の全面義務化は、求職者にとっては仕事が増える根拠であり、経営者にとっては単価が上がる根拠です。制度が需要をつくっている職種だと説明できることは、他の技能職にはない強みです。
「景気がよくなれば仕事が増える」ではなく、「法律で決まったから仕事が増える」と言える点が決定的に違います。この違いは、転職を迷っている人ほど重く受け止めます。
- ✓住宅系かビル系か(カーテンウォールの有無)
- ✓新築と改修(内窓・断熱改修)の比率
- ✓扱う製品(樹脂サッシ、Low-E複層ガラス、自動ドア、シャッター等)
- ✓揚重機を使う現場かどうか、搬入体制
入口の資格がない分、社内の育成段階をつくる
ガラス施工にもサッシ施工にも3級がありません。つまり、入社後しばらくは目標にできる公的な資格が存在しない期間が生まれます。ここを社内の等級や到達基準で埋められるかどうかが、定着率を左右します。
資格取得の費用と時間を会社が持つ
技能士の受検には7年の実務経験が必要です。長い道のりだからこそ、受検料と講習費の負担、学習時間の確保を会社が引き受ける姿勢が効いてきます。合格時の一時金と月額の資格手当を規程に書くことをおすすめします。
その間に取れる周辺資格を組み合わせるのも有効です。玉掛け技能講習、高所作業車運転技能講習、足場の組立て等作業主任者技能講習などは、いずれも短期間で取得でき、任せられる現場を確実に広げます。
CCUSのレベルと社内等級を連動させておけば、評価の根拠を第三者基準に置けます。「なぜあの人のほうが給与が高いのか」という不満を減らすうえでも有効です。
とはいえ、制度を整えても母集団そのものが集まらないという現実もあります。ガラス・サッシのように専門性が高く人数の少ない職種では、求人媒体だけでなく、職種を理解している人材紹介の力を借りることが近道になる場合があります。
まとめ
ガラス工・サッシ工は、2025年4月の省エネ基準適合の全面義務化によって、仕事の量と質が同時に変わった職種です。国も樹脂サッシやLow-E複層ガラスを名指しで挙げており、扱う製品は高性能化が進んでいます。
一方で、技能検定に3級がなく、登録サッシ・カーテンウォール基幹技能者も300名と、有資格者の層は非常に薄いままです。制度の追い風と人材の薄さが同時に存在しているのが現状といえます。
- ✓2025年4月1日から原則すべての新築が省エネ基準適合の義務対象(除外は10㎡以下)
- ✓サッシ取付け工事は建具工事業、ガラス取付けはガラス工事業に区分される
- ✓技能検定はガラス施工・サッシ施工とも1級・2級のみで3級はない
- ✓CCUSの能力評価分野にサッシ・カーテンウォールと硝子が含まれる
- ✓登録サッシ・カーテンウォール基幹技能者は令和8年3月末で300名
入口の資格がないということは、裏を返せば社内の育成設計がそのまま差別化になるということです。段階を明文化することが、採用と定着の両方に効いてくるとお考えいただければと思います。
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