【溶接工】技能検定がない職種!評価の物差しと転職・採用の戦略

「溶接ができる人を探しているが、応募者の腕をどう見極めればいいのか分からない」「資格の名前が多すぎて、どれが実力を示すのか判断できない」。

このようなお悩みを抱えている経営者様や人事担当者様は、非常に多くいらっしゃいます。実はこれには構造的な理由があります。溶接には、国家検定である技能検定の職種が存在しません。大工にも鉄筋にも左官にもある「◯◯技能士」という分かりやすい物差しが、溶接にはないのです。

その代わりに機能しているのが、日本溶接協会のJIS溶接技能者資格と、建築鉄骨向けのAW検定です。本記事では、この評価の仕組みと、令和3年から始まった溶接ヒュームの規制、そして採用・育成の打ち手を整理してご説明いたします。

建設業界の転職ならミライ建設ナビ
目次

溶接に「技能士」はいない。では何で腕を測るのか

物差しがないのではなく、物差しが国家検定の外にある、というのが正確な表現です。

溶接は、仕上がりの良し悪しが外から見えにくい仕事です。表面がきれいでも内部に欠陥があれば強度は出ません。だからこそ、第三者が試験で確認するという仕組みが業界全体で発達してきました。

技能検定133職種に「溶接」は入っていない

厚生労働省が公表する技能検定の実施職種一覧を確認すると、溶接という職種は含まれていません。関連しそうな職種としては鉄工や溶射などがありますが、溶接そのものの技能検定は実施されていないのが現状です。

このため、採用する側からは応募者の技能が見えにくいという問題が生じます。逆にいえば、資格を正しく説明できる求職者は、それだけで有利になります。

面接で「溶接できます」と言われたときに、会社側が何を聞き返せるか。これが採用の精度を大きく左右します。聞くべきことは決まっていて、どの規格のどの区分を持っているか、その有効期限はいつか、の2点です。

JIS溶接技能者資格が事実上の標準

一般社団法人日本溶接協会が実施する溶接技能者評価試験は、JIS規格に基づいて行われています。区分は溶接方法ごとに分かれています。

Check 主なJIS溶接技能者資格
  • 手溶接技能者…JIS Z 3801(被覆アーク溶接、ティグ溶接、組合せ溶接、ガス溶接の4種)
  • 半自動溶接技能者…JIS Z 3841
  • ステンレス鋼溶接技能者…JIS Z 3821
  • 各方法に基本級と専門級があり、溶接姿勢ごとに記号(F・V・H・O・P)が付く

評価は外観試験および曲げ試験によって行われます。どの溶接方法で、どの姿勢まで、基本級か専門級か。この3点が分かれば、応募者の技能はかなり正確に把握できます。

基本級は下向きなど基本的な姿勢、専門級は立向や上向といった難度の高い姿勢に対応します。現場溶接では姿勢を選べないため、専門級を持っているかどうかが任せられる仕事を分けます。

建築鉄骨にはAW検定という独自の資格がある

建築鉄骨の分野では、AW検定協会が実施する試験が用いられています。試験種目には工場溶接試験、工事現場溶接試験、鋼管溶接試験、ロボット溶接オペレータ試験があります。

AW検定は建築鉄骨溶接に特化した資格として位置づけられており、工事監理・施工管理の省力化と技能者の社会的評価の向上に寄与するとされています。鉄骨の現場を扱うなら、この資格の有無は判断材料になります。

鉄骨造の建物は、柱と梁の接合部の溶接が構造そのものを支えています。地震のときに建物がもつかどうかは、この溶接の品質にかかっているといっても言い過ぎではありません。

溶接の資格は「取って終わり」ではない

有効期間があり、維持には手続きと費用がかかります。ここが他の技能職と決定的に違う点です。

有効期間は1年、サーベイランスを2回、3年で再評価

日本溶接協会によれば、適格性証明書の有効期間は1年で、有効期間満了前3か月以内にサーベイランスの申請を行うこととされています。このサーベイランスの申請は2回行い、資格の登録後3年を経過して資格を更新しようとする場合は、有効期間を満了する前8か月から2か月の間に再評価を受けなければならないとされています。

Point JIS溶接技能者資格の維持サイクル
  • 適格性証明書の有効期間は1年
  • 満了前3か月以内にサーベイランスを申請(これを2回)
  • 登録後3年を経過したら再評価を受ける
  • 再評価は有効期間満了前8か月から2か月の間に申請

つまり、資格を持ち続けるには継続的な手続きと費用が発生します。会社がこれを負担するかどうかが、技能水準と定着率に直結します。

法令上の資格は、ガス溶接とアーク溶接で扱いが違う

労働安全衛生法施行令第20条第10号は、可燃性ガス及び酸素を用いて行う金属の溶接、溶断または加熱の業務を就業制限業務としています。ガス溶接技能講習の修了などが必要です。

一方、アーク溶接については労働安全衛生規則第36条第3号に基づく特別教育の対象とされています。技能講習と特別教育では位置づけが異なりますので、混同しないようご注意ください。

この特別教育は、実務に就く前に必ず受けておくべきものです。未経験で入社する場合、まずここから始まると考えていただいて差し支えありません。

溶接管理技術者という上位の道もある

日本溶接協会には、溶接施工の管理を担う溶接管理技術者の認証制度もあります。手を動かす技能から、施工方法や品質を管理する立場へと進む道が用意されているということです。

施工要領書を書き、溶接条件を決め、検査結果を評価する。手を動かした経験があるからこそ判断できる領域であり、現場出身者が強みを発揮できるポジションです。

体力の負担が変わるため、長く働き続けるうえでも意味のあるキャリアパスになります。

溶接ヒューム規制が、職場選びの新しい物差しになった

令和3年4月から、金属アーク溶接等作業は特定化学物質としての規制対象になりました。

令和3年4月1日施行、フィットテストは令和5年4月から

厚生労働省によれば、令和2年政令第148号および令和2年厚生労働省令第89号が令和2年4月22日に公布され、令和3年4月1日から施行されました。これにより溶接ヒュームが特定化学物質の第2類物質に追加されました。

経過措置により、一部は令和4年4月1日、フィットテストの実施については令和5年4月1日から施行されています。

事業者に課された義務は5つ

厚生労働省の資料によれば、金属アーク溶接等作業を行う事業者には次の措置が求められています。

Check 溶接ヒューム規制で求められること
  • 個人ばく露測定により、空気中の溶接ヒュームの濃度を測定する
  • 全体換気装置による換気の実施、またはこれと同等以上の措置を講じる
  • 要求防護係数を上回る指定防護係数を有する呼吸用保護具を選択する
  • 1年以内ごとに1回、フィットテストを実施する
  • 常時従事する労働者に対する健康診断と、じん肺健康診断を行う

さらに、労働安全衛生法施行令第6条第18号に基づき、特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者技能講習を修了した者のうちから作業主任者を選任する必要があります。

対応できていることが、そのまま採用競争力になる

この5点が実際に回っている職場かどうかは、会社によってはっきり差が出ます。経験のある溶接工ほど、自分の肺を守ってくれる会社かどうかを見ています。

じん肺は、進行してからでは戻りません。20年後の自分の体をどう守るかという話を、入社の段階で正面から説明できる会社は多くありません。

フィットテストを毎年やっている、局所排気装置を入れている、じん肺健診を欠かさない。これらは法令上の義務であると同時に、求人票に書ける具体的な強みでもあります。

「安全第一」と書くより、「フィットテストを年1回実施しています」と書くほうが伝わります。

溶接工を採用・育成するために企業がすべきこと

物差しが分かりにくい職種だからこそ、会社が物差しを用意できると強くなります。

求人票に「求める資格」を具体的に書く

「溶接経験者歓迎」では、何ができれば採用されるのか分かりません。溶接方法・姿勢・基本級か専門級かまで書けば、応募者は自分が該当するか即座に判断できます。

逆に、未経験者を採る場合も同じです。入社後にどの資格を、いつまでに取らせるつもりなのかを書けば、経験がなくても応募の判断ができるようになります。

Check 求人票に書くと効くこと
  • 求める資格(例:半自動溶接 専門級、JIS Z 3841 の該当区分)
  • 扱う対象(建築鉄骨/プラント配管/橋梁/機械部品)
  • 工場内作業と現場溶接の比率
  • 資格の更新費用とサーベイランスの費用を会社が負担するかどうか

資格の維持費用を会社が持つと明記する

溶接資格は1年ごとのサーベイランス、3年ごとの再評価が必要です。個人負担にすると、更新を諦める職人が出ます。そうなると、会社としても有資格者の数が知らないうちに減っていくという事態が起こります。

更新費用の会社負担と、受験のための業務調整。この2つを規程に書いておくだけで、他社との差になります。

また、資格の有効期限を社内で一覧管理しておくことも重要です。誰の何がいつ切れるのかを把握していないと、必要な現場に人を出せないという事態が起こります。

ロボット溶接との共存を前向きに示す

AW検定にはロボット溶接オペレータ試験という種目があります。つまり、ロボットを動かす側の技能も資格として評価される仕組みがすでにあるということです。

工場での定型的な溶接はロボットが担い、人は現場溶接や補修、そしてロボットの段取りと品質確認に回るという分業が進んでいます。

自動化は職人の仕事を奪うものではなく、扱える人の価値を上げるものだという説明ができれば、若い世代にも届きます。

実際、溶接条件を決められる人、不具合の原因を読める人の需要は減っていません。機械が担えないのは、判断の部分だからです。

とはいえ、伝える相手に届かなければ始まりません。溶接のように資格体系が複雑な職種では、求人媒体だけでなく、資格を理解している人材紹介の力を借りることが近道になる場合があります。

今のお気持ちを教えてください
完全無料 就活相談はこちらから!

まとめ

溶接には国家検定である技能検定の職種がありません。その代わり、日本溶接協会のJIS溶接技能者資格と、建築鉄骨向けのAW検定が実質的な標準として機能しています。

そしてこれらの資格は、有効期間1年・サーベイランス2回・3年で再評価という維持コストのかかる資格です。この費用を会社が負担するかどうかが、社内の技能水準をそのまま決めていきます。

Point この記事の要点
  • 技能検定に「溶接」職種は存在しない。標準はJIS溶接技能者資格とAW検定
  • JIS資格は有効期間1年、サーベイランス2回、登録後3年で再評価
  • ガス溶接は技能講習(令第20条第10号)、アーク溶接は特別教育(安衛則第36条第3号)
  • 溶接ヒュームは令和3年4月1日から特定化学物質の第2類物質
  • フィットテストは令和5年4月1日から、1年以内ごとに1回の実施が必要

資格の維持を支える体制と、ヒューム規制への対応。この2つを整えている会社であることが、そのまま採用の強さになるとお考えいただければと思います。

お問い合わせ

ミライ建設ナビでは、建設業界に特化した人材のご紹介と、採用・定着のご支援を行っております。溶接工をはじめとする技能職の採用でお困りの経営者様・人事担当者様は、下記よりお気軽にご相談ください。



    目次