【タイル張り】10年ごとに仕事が来る!資格とキャリア・採用戦略

「タイル職人が高齢化していて、若手がまったく入ってこない」「大規模修繕の引き合いはあるのに、対応できる職人が足りない」。

このようなお悩みを抱えている経営者様や人事担当者様は、非常に多くいらっしゃいます。国土交通省の資料によれば、建設業の就業者数は令和6年平均で478万人、うち技能者は296万人です。ピークだった平成9年の685万人からおよそ3割減り、55歳以上が36.6%を占める一方で29歳以下は11.9%にとどまっています。

しかしタイル張りには、法律によって繰り返し発生する仕事があります。建築基準法第12条に基づく定期報告制度では、外壁タイルについておおむね10年に一度の全面打診等が求められています。本記事では、この構造と資格によるキャリア、そして採用の打ち手を整理してご説明いたします。

建設業界の転職ならミライ建設ナビ
目次

タイル張りは「10年ごとに点検される」仕事

外壁タイルの剥落は、人の命に関わります。だからこそ法律が点検の周期を定めています。

実際、外壁タイルの落下事故は繰り返し報じられてきました。制度が細かく点検の方法まで定めているのは、それだけ被害が深刻になり得るからです。

おおむね10年に一度、全面打診等が必要

建築基準法第12条に基づく定期報告制度では、平成20年国土交通省告示第282号により、外装仕上げ材についておおむね6ヶ月から3年以内に一度の手の届く範囲の打診等に加え、おおむね10年に一度、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面的な打診等を行うこととされています。

国土交通省の資料によれば、10年の起算点は竣工、外壁改修等からで、その後最初の調査の際に全面打診等により調査することとされています。この運用は平成20年4月1日から適用されています。

つまり、建物が建っている限り、10年ごとに調査と補修の仕事が発生するということです。景気に左右されにくい需要が制度によって担保されている、珍しい職種といえます。

新築のタイル工事が景気に連動するのに対し、この点検由来の補修工事は建物の築年数に連動します。受注の山と谷が新築とはずれるため、会社の売上を平準化する柱になり得ます。

ドローンによる赤外線調査も認められた

令和4年1月18日の改正により、打診以外の方法として無人航空機による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものが明確化されました。

これは打診技能が不要になったという意味ではありません。調査の手法が増えた分、調査で見つかった不具合を直せる職人の価値はむしろ上がるという見方が自然です。

赤外線やドローンは、どこが怪しいかを効率よく絞り込む道具です。しかし、浮いているタイルを落とさずに剥がし、周囲と色を合わせて張り替える作業は、人の手にしかできません。

建設業許可は「タイル・れんが・ブロック工事業」

国土交通省の資料によれば、タイル・れんが・ブロック工事業の工事の内容は「れんが、コンクリートブロック等により工作物を築造し、又は工作物にれんが、コンクリートブロック、タイル等を取付け、又ははり付ける工事」とされています。

例示にはタイル張り工事のほか、コンクリートブロック積み(張り)工事、レンガ積み(張り)工事、築炉工事、スレート張り工事、サイディング工事が含まれます。なお区分の考え方として、屋根ふき工事は屋根工事に該当する点にご注意ください。

つまり同じ許可の中に、外装のタイルから工場の炉を築く仕事まで幅広く含まれています。会社によって何を主力にしているかがまったく違うため、求人票では扱う工事を具体的に書く必要があります。

技能検定は1級・2級のみ、3級がない

入口の資格が制度として用意されていないことが、この職種の育成上の課題になっています。

タイル張りの技能検定には3級がない

中央職業能力開発協会の受検案内によれば、技能検定「タイル張り」の作業名はタイル張り作業で、実施等級は1級・2級のみです。3級は実施されていません。

Check 関連する技能検定の等級
  • タイル張り(タイル張り作業)…1級・2級
  • ブロック建築(コンクリートブロック工事作業)…1級・2級・3級
  • 築炉(築炉作業)…1級・2級

技能検定の受検に必要な実務経験は、原則として1級が7年以上、2級が2年以上です。つまりタイル張りでは、入社してから2年間は目標にできる公的な資格がないということになります。

2年で2級、7年で1級という道筋を先に示す

入口の資格がないなら、社内で埋めるしかありません。1年目は下地づくりと材料の練り方、2年目で2級技能士に挑戦、というように到達点を明文化しておくことが有効です。

目標が見えない状態で2年を過ごすと、若手は自分が成長しているのかどうか分からなくなります。半年ごとの到達基準を決めて面談の場で確認するだけでも、離職の防止につながります。

あわせて、足場の組立て等作業主任者技能講習や有機溶剤作業主任者技能講習など、短期間で取得できる周辺資格を早い段階で取らせておくと、任せられる現場が広がります。

ブロック建築の3級を入口として使う手もある

同じ許可業種に含まれるブロック建築には3級があります。3級は実務経験を問わず受検でき、在学中の学生も対象になります。

技能検定の3級は、工業高校や職業能力開発校の在学中に受検できるのが最大の利点です。学校との接点を持つ会社にとっては、採用の入口そのものになります。

自社がブロック工事も扱っているなら、若手の最初の目標としてこちらを設定するという選択肢もあります。制度を柔軟に使う発想が、育成の速度を変えます。

有資格者の希少性が、そのまま価値になる

タイル張りは、上位資格の保有者が極端に少ない職種です。

登録タイル張り基幹技能者は341名

登録基幹技能者は、現場で職長をまとめる立場の技能者を認定する制度です。建設業振興基金によれば、受講資格は実務経験10年以上かつ職長経験3年以上とされています。

同基金の公表値では、令和8年3月31日現在の登録タイル張り基幹技能者は341名。全51種目の合計91,599名のうち0.4%にも満たない数字です。経営事項審査でも加点対象となるため、企業にとっては受注面の価値も持ちます。

全国に341名。この数字は、希少性の証明であると同時に、担い手不足の深刻さも表しています。

CCUSでも「タイル張り」が能力評価の対象分野

建設キャリアアップシステム(CCUS)では、就業日数・保有資格・職長経験から技能者を4段階で評価します。レベル1が白、レベル2が青、レベル3がシルバー、レベル4がゴールドのカードとなります。

国土交通省の資料では、令和8年6月30日時点の判定件数はレベル4が68,952件、レベル3が48,724件、レベル2が55,251件です。能力評価基準は50分野で策定されており、タイル張りもその対象に含まれます。

大規模修繕という安定した仕事の柱

マンションの大規模修繕は、一般に十数年の周期で実施されます。外壁タイルの補修はその中心的な工程であり、定期報告制度の全面打診とも時期が重なります。

この工事では、タイルの補修と同時に足場が架けられ、シーリングの打ち替えや塗装も行われます。他職種と工程を組み合わせる力がある会社ほど、まとまった受注につながります。

新築のタイル工事が減る局面でも、既存ストックの改修という受け皿があることは、この職種の大きな強みです。

タイル職人を採用・育成するために企業がすべきこと

母集団が小さい職種では、他社と同じ求人票では届きません。

「10年ごとに仕事が来る」を制度で説明する

求職者が最も気にするのは、この仕事が続くかどうかです。タイル張りは、法律で点検と補修の周期が決まっているという説明ができる、数少ない職種です。

「景気がよければ」ではなく「法律で決まっているから」と言える点が、他の職種との決定的な違いです。この一点を求人票の冒頭に置くだけで、読まれ方が変わります。

Check 求人票に書くと効くこと
  • 新築と大規模修繕の比率
  • 扱うタイルの種類(小口・二丁掛・大判・床タイル)と工法(圧着張り・乾式工法など)
  • 足場を自社で掛けるかどうか
  • 資格取得支援の範囲(受検料・講習費・合格時の手当)

下地づくりの価値を言葉にする

タイルは貼った直後は誰が施工しても同じように見えます。差が出るのは数年後です。浮きや剥離が起きるかどうかは、下地の処理と接着材の管理で決まります。

割付けも同じです。どこから張り始め、端部の半端をどこに逃がすか。この判断が建物の見え方を決めますが、図面には書かれていないことがほとんどです。

見えない部分に手をかけられるかどうかが職人の価値だという説明は、他の仕上げ職種にも共通しますが、タイルでは特に鮮明です。この話は、仕事に誇りを持ちたい人材に届きます。

打診調査で叩かれたときに、自分の仕事がどう評価されるか。10年後に答え合わせが来る仕事だという言い方は、真面目な人ほど響きます。

希少性を訴求材料として使う

全国に341名しかいない登録タイル張り基幹技能者。裏を返せば、到達すれば全国でも数えるほどの存在になれるということです。ゴールが遠いのではなく、ゴールに立っている人が少ないのです。

到達までの標準的な道のりは、2級技能士、1級技能士、職長・安全衛生責任者教育、そして実務10年と職長3年を満たしての登録基幹技能者講習という順番になります。

とはいえ、そこまでの道のりを本人だけに背負わせては続きません。受検料と講習費の会社負担、合格時の一時金、月額の資格手当。これらを規程に明記することをおすすめします。

そして、制度を整えても母集団そのものが集まらないという現実もあります。タイル張りのように人数の少ない職種では、求人媒体だけでなく、職種を理解している人材紹介の力を借りることが近道になる場合があります。

今のお気持ちを教えてください
完全無料 就活相談はこちらから!

まとめ

タイル張りは、建築基準法第12条の定期報告制度によって、おおむね10年に一度の全面打診等が求められる分野です。建物が建っている限り、調査と補修の仕事が繰り返し発生します。

一方で、技能検定に3級がなく、登録タイル張り基幹技能者も341名と、人材の層は極めて薄いままです。需要が制度で守られ、供給が細っているという構図が、この職種の現状です。

Point この記事の要点
  • 外壁タイルはおおむね10年に一度の全面打診等が必要(平成20年国交省告示第282号)
  • 令和4年の改正で、無人航空機による赤外線調査も方法として明確化された
  • 技能検定タイル張りは1級・2級のみ。3級はない(ブロック建築には3級がある)
  • 登録タイル張り基幹技能者は令和8年3月末で341名。全51種目合計91,599名の0.4%未満
  • CCUSの能力評価分野にタイル張りが含まれる

入口の資格がないということは、社内の育成設計がそのまま差別化になるということです。到達点を明文化することが、採用と定着の両方に効いてくるとお考えいただければと思います。

お問い合わせ

ミライ建設ナビでは、建設業界に特化した人材のご紹介と、採用・定着のご支援を行っております。タイル職人をはじめとする技能職の採用でお困りの経営者様・人事担当者様は、下記よりお気軽にご相談ください。



    目次